日本郵船(9101) 2020年~の株価上昇要因・理由の分析

海運画像 日本株

この記事では、海上運送業を展開している日本郵船の2020~2022年に株価上昇した要因(原因、理由)について、分析した情報を解説していきます。

日本郵船の企業概要

まずは、日本郵船の概要を確認していきたいと思います。

出典:2023年2集 会社四季報

日本郵船は、定期船事業、航空運送事業、物流事業、不定期専用船事業、不動事業、それ以外にも、石油製品や舶用機器販売のほか、客船事業などを展開している企業となっています。

客船事業においては、日本初の世界一周クルーズを就航させたようです。

また、定期船事業では、川崎汽船、商船三井と3社の定期コンテナ線事業を統合することを決定し、合弁でシンガポールに事業運営会社であるOcean Networl Express(ONE)を設立し、2018年4月よりサービスを開始したようです。

ONEは、ピンク色の背景に、大きく白文字でONEと記載しているトラックや船舶を使って、荷物を運送しているので、高速道路などを運転されている方は、よく見かけるのではないかと思います。

それでは、日本郵船の2020~2022年に株価上昇したチャートを見ていきます。

株価チャート

こちらの月足の株価チャートで示した、赤四角で囲んだ部分が今回分析を行う株価上昇部分となります。

株価上昇に転じる前の株価の底が、約500円となっています。

その後、約4,000円付近まで上昇しているので、株価の底500円で日本郵船の株式を購入できれば、4000円/500円=800%(8倍株)となり、日本郵船の株式を購入したお金が8倍になったということになります。

100万円分購入していたら、800万円に変化ということですね。

それでは、気になる8倍株に変化した要因・理由を分析していきます。

上昇要因の分析

財務面での分析

まずは、各企業のIRページにて、開示されている決算や有価証券報告書に記載の財務状況から、株価上昇の要因・理由を分析していきます。

ちなみに、日本郵船の決算や有価証券報告書が開示されているIRサイトのURLは、こちらです。ご興味ある方は、ぜひご確認頂ければと思います。

財務面で確認する項目は、以下に示す通りで、投資の神様と言われるウォーレン・バフェットの指標(出典:バフェットの財務諸表を読む力)をお借りして、財務面の状況を確認していきたいと思います。

財務面の確認項目

  • 売上高(営業収益)
  • 純利益
  • 流動比率(=流動資産/流動負債)
  • 現金
  • ROE(株主資本利益率=純利益/純利益)
  • EPS(1株当たり利益=純利益/発行済み株式総数)
  • キャッシュフロー・マトリックス

売上高・営業利益・純利益

売上高と営業利益、純利益は以下グラフのようになります。

売上高
営業利益
純利益

株価上昇があった期間が、2020~2022年となりまして、2020年から2022年にかけて、営業利益及び純利益が大幅に上昇していることが分かります。

2022年の大幅な純利益増加の要因・理由としては、新型コロナウイルスによって、ライナー&ロジスティックス事業を中心に輸送スペースの需給が逼迫した状況が続き、運賃水準が上昇したことが影響したようです。

この運賃水準上昇は、新型コロナウイルスの影響による、巣ごもり需要および労働力不足で港湾での処理遅れによる港湾混雑の影響により、需要は増える一方、供給は減るという、運送の供給不足がもたらしました。

この運賃水準の上昇が、寄与して、大幅な営業利益、純利益の上昇に繋がったようです。

この大幅な利益上昇及び、新型コロナウイルスの影響による、運賃水準の継続的な上昇が期待され、株価が上昇したのではないかと考えられます。

その他財務状況

株価上昇の分析でも使いますが、主に投資対象としての適正を見る側面として、流動比率、現金、ROE(株主資本利益率)、EPS(1株当たり利益)、キャッシュフロー・マトリックスの数値を見ていきます。

流動比率

ウォーレン・バフェット指標:過去5年以上0.5%以上か?

現金

ウォーレン・バフェット指標:現金の推移は安定しているか、右肩上がりか?

ROE

ウォーレン・バフェット指標:株主資本利益率(ROE)は安定的に高い数値か?

参考:2018年 日本の上場企業ROE平均値9.4%(出典:経済産業省)

EPS

ウォーレン・バフェット指標:1株当たり利益(EPS)が安定的に高くなっているか?

キャッシュフローマトリックス

ウォーレン・バフェット指標:キャッシュフロー・マトリックスが安定期もしくは投資期か?(下図参照)

キャッシュフローマトリックス住み分け

これらの指標を確認すると、上述した2020年から2022年の利益の大幅上昇の影響によって、ROEやEPSの急激な上昇が見られ、ROEが80%以上と中々見られない数値となっており、その他の数値も数値的には健全と考えられ、投資対象としては、優秀なのではないかと思われます。

次に、日足でのチャートと各種テクニカル指標を確認し、もう少し詳細な株価上昇要因を見ていきます。

日足チャートとテクニカル指標での分析

日足チャートに、ボリンジャーバンド、MACD、RSIなどのテクニカル指標を追加したグラフがこちらです。(日足チャートのみと日足チャートにテクニカル指標追加したグラフを分けています)

■日足チャート

日足チャート

■日足チャート+MACD+RSI+出来高

日足チャート+テクニカル指標

※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:25日移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線

<テクニカル指標説明>

ボリンジャーバンド: 一般的に、上線にローソク足が近づけば売り、下線にローソク足が近づけば買い(価格の大半が上線と下線の帯(バンド)の中に収まるという統計学を応用した指標で、様々な活用法がある)

MACD(Moving Average Convergence Divergence): ヒストグラムが「マイナス→0→プラス」で買いシグナル、「プラス→0→マイナス」で売りシグナル(売買タイミングを判断する指標)

RSI(Relative Strength Index): 一般的に70~80%以上で買われ過ぎ、20~30%以下で売られ過ぎ(買われすぎ、売られ過ぎを確認し、売買タイミングを判断する指標)

日足で確認すると、大きく株価上昇しているポイントが2箇所ぐらいあり、2021年9月から大幅な株価下落がありましたが、最終的に株価が約4,000円まで上昇したことが分かります。

それでは、その大きく株価上昇ポイントである、グラフに記載の赤四角部分、青四角部分の株価上昇分析をしたいと思います。

赤四角部分の株価上昇要因・理由

まず、初めに赤四角部分の期間(2021年8月付近)には、2022年3月期の第1四半期決算報告(2021年8月4日)と2022年3月期業績予想並びに配当予想の修正に関するお知らせをしています。

2021年3月期の第1四半期決算報告

この決算では、連結経常利益が前年同期比9.3倍の1,536億円に急拡大したことを報告しています。

この理由としては、売上高・営業利益・純利益の部分で記載したように、新型コロナウイルスの影響で、巣ごもり消費によって、旺盛な輸送需要が継続し、また、港湾や内陸の混雑も解消されず、需給逼迫が継続し、短期運賃が高止まり、長期運賃も上昇したことが影響したようです。

2022年3月期業績予想並びに配当予想の修正に関するお知らせ

2022年3月期業績予想並びに配当予想の修正に関するお知らせでは、まず業績予想において、通期の経常利益を前回予想3,700億円から5,000億円に35.1%上方修正し、純利益も前回予想3,500億円から5,000億円に27.3%上方修正し、2期連続の過去最高益を達成する見込みを報告しています。

また、配当については、中間配当を前回予想1株当たり100円から200円へ増額し、期末配当を前回予想1株当たり100円から500円へ増額することを報告しています。

つまり、年間配当を1株当たり500円増額修正しています。

これらの業績の上方修正及び配当金の大幅増額によって、株価が上昇したと考えられます。

青四角部分の株価上昇要因・理由

次に、青四角部分の期間(2022年3月付近)には、2022年2月24日から始まったウクライナ侵攻の影響で、コモディティ価格(原油や天然ガスなどのエネルギー、銅や鉄鉱石などの工業用金属、金やプラチナなどの貴金属、木材や小麦などまで含め、商品先物として取引されている価格)の価格上昇があり、グローバル物流を担う海運市況の上昇にも繋がるのではないかという思惑買いから海運株が上昇したようです。

それを裏付けるように、商船三井や川崎汽船などの海運株の株価がほとんど同じような株価の推移をしていることが分かります。

■商船三井(9104) 2022年1月~3月の日足チャート

商船三井の日足チャート

■川崎汽船(9107) 2022年1月~3月の日足チャート

川崎汽船の日足チャート

これらの要因があり、株価が上昇し続けて、約4,000円まで株価上昇したと考えられます。

まとめ

この記事では、日本郵政(9101)の株価上昇要因・理由について、解説しました。

今回の日本郵船の主な株価上昇要因・理由として、以下のような要因・理由がありました。

  • 業績の上昇修正
  • 配当金の大幅増額
  • ウクライナ侵攻による思惑買い

今回の日本郵船の株価上昇要因には、以下の記事で紹介した日本製鉄と同じように、業績などのミクロ的な要因と、新型コロナウイルスやウクライナ侵攻のような国際的な情勢変化のマクロ的な要因のどちらも影響して、株価が上昇したことが分かりました。

特に、新型コロナウイルスの影響によって、巣ごもり消費の需要が伸びているにもかかわらず、これも新型コロナウイルスの影響によって、人手不足が起こり、供給が追いつかない、と言う需要と供給のバランスが大きく崩れたことで、輸送運賃の騰勢に拍車がかかり、海運株の株価は鰻登りに上昇しました。

このように、マクロ的な市場や情勢変化が起こったタイミングで、需要と供給のバランスが大きく変わり、今まで注目されていなかった銘柄が大きく値動きすることもありますので、市場、情勢変化を分析し、どのようなモノ、サービスに需要が集まるかを考え、先読みして動くことで、2倍株以上の株を掴むことができるのではないかと思います。

以下の記事で、一般的な株価上昇の要因・理由を紹介してますので、ご興味ございましたら、ご確認頂ければと思います。

長々と記載させて頂きましたが、お読み頂きまして、ありがとうございました。今回お読み頂いて、お読み頂いた方の気づきがあれば、幸いです。

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