この記事では、クラウドサービスを展開している高千穂交易(2676)の2020年〜2022年の間に株価上昇した要因(原因、理由)について、分析した情報を解説していきます。
高千穂交易の企業概要
まずは、高千穂交易の概要を確認していきたいと思います。
出典:2023年2集 会社四季報
高千穂交易は、独立系技術商社のようで、クラウドサービスなどのITシステム機器を扱っている企業のようです。
私が感じた高千穂交易が扱っている製品の中で面白いと思ったのが、AI自動販売機”PickShop”です(PickShop HP)。
PickShopは、利用者が手に取ったドリンク等の商品の映像を、ショーケース内に設置された2台のカメラで取得し、その映像をAIが解析することで、商品を自動的に認識するようです。
ユーザー視点でいうと、専用アプリCoke ONでスマホ決済が可能なコカコーラの自販機や電子決済対応の自動販売機と似たようなシステムなので、特段メリットは感じられないと思います。
ただ、自動販売機を運営する企業側からすると、AIの解析で欠品による販売機会ロスの削減やAIの解析結果をクラウドで管理することで、リアルタイムの運用管理が可能で、新商品の売れ行きなどがリアルタイムで確認できるといったメリットなどがありそうです。
それでは、高千穂交易の2020年〜2022年に上昇した株価チャートを見ていきます。
株価チャート
※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:12ヶ月移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線
こちらの月足の株価チャートで示した、赤四角で囲んだ部分が今回分析を行う株価上昇部分となります。
株価上昇に転じる前の2020年5月31日(2020-May-31)付近の株価の底が、おおよそ900円となっています。
その後、2,500円付近まで上昇しているので、株価の底900円で高千穂交易の株式を購入できれば、2500円/900円≒278%(2.8倍株)となり、高千穂交易の株式を購入したお金が約2.8倍に化けていたことになります。
100万円分購入していたら、280万円に変化ということですね。
それでは、気になる2.8倍株に変化した要因を分析していきます。
上昇要因の分析
財務面での分析
まずは、各企業のIRページにて、開示されている決算や有価証券報告書に記載の財務状況から、株価上昇の要因を分析していきます。
ちなみに、高千穂交易の決算や有価証券報告書が開示されているIRサイトのURLは、こちらです。ご興味ある方は、ぜひご確認頂ければと思います。
財務面で確認する項目は、以下に示す通りで、投資の神様と言われるウォーレン・バフェットの指標(出典:バフェットの財務諸表を読む力)をお借りして、財務面の状況を確認していきたいと思います。
財務面の確認項目
- 売上高(営業収益)
- 純利益
- 流動比率(=流動資産/流動負債)
- 現金
- ROE(株主資本利益率=純利益/純利益)
- EPS(1株当たり利益=純利益/発行済み株式総数)
- キャッシュフロー・マトリックス
売上高・純利益
売上高と純利益は以下グラフのようになります。
株価上昇があった期間が、2020年から2022年となりますが、2020年の純利益は大幅減益となっています。
大幅減益の理由としては、やはりコロナウイルスの影響が関わっているようで、
>>2020年1月以降コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、一部製品の調達や移動制限に伴って営業活動に支障が出ている状況となっており、また、グローバル事業が第4四半期連結会計期間に減速したことなどから、前年同期比3.6%増の206億16百万円に留まりました。(2020年通期決算短信より)
ということのようで、また、のれん等の減損損失を計上したことなどによって、減益となったようです。
一方、2021年と2022年には、純利益の大幅な上昇が見られます。2021年の純利益上昇の要因としては、コロナウイルスの影響を受け、テレワーク需要の高まりによるリモートアクセス商品や通信端末向け半導体部品の販売が好調だったことに加え、販売費及び一般管理費の削減に努めたことが影響しているようです。
また、2022年の純利益は、過去最高純益のようで、この要因としては、5G基地局向け電子部品、テレワーク増加による家庭用プリンタ向け電子部品や、米国での住宅設備向け機構部品の販売が好調に推移したことに加え、売上総利益率の改善(コストダウン)が影響しているようです。
これらのような決算の数値が株主に好感を持たれ、株価上昇に繋がっていたのではないかと考えられます。
その他財務状況
株価上昇の分析でも使いますが、主に投資対象としての適正を見る側面として、流動比率、現金、ROE(株主資本利益率)、EPS(1株当たり利益)、キャッシュフロー・マトリックスの数値を見ていきます。
ウォーレン・バフェット指標:過去5年以上0.5%以上か?
ウォーレン・バフェット指標:現金の推移は安定しているか、右肩上がりか?
ウォーレン・バフェット指標:株主資本利益率(ROE)は安定的に高い数値か?
ウォーレン・バフェット指標:1株当たり利益(EPS)が安定的に高くなっているか?
ウォーレン・バフェット指標:キャッシュフロー・マトリックスが安定期もしくは投資期か?(下図参照)
これらの指標を確認すると、やはりコロナ禍が起きた、2020年の純利益の大幅減益によって、ROEやEPSの悪化がありますが、2020年を除けば、ウォーレン・バフェットの指標を概ねクリアしており、投資対象として、まずまずの印象ではないかと考えられます。
次に、日足でのチャートと各種テクニカル指標を確認し、もう少し詳細な株価上昇要因を見ていきます。
日足チャートとテクニカル指標での分析
日足チャートとボリンジャーバンド、MACD、RSIなどのテクニカル指標を追加したグラフがこちらです。
※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:25日移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線
<テクニカル指標説明>
ボリンジャーバンド: 一般的に、上線にローソク足が近づけば売り、下線にローソク足が近づけば買い(価格の大半が上線と下線の帯(バンド)の中に収まるという統計学を応用した指標で、様々な活用法がある)
MACD(Moving Average Convergence Divergence): ヒストグラムが「マイナス→0→プラス」で買いシグナル、「プラス→0→マイナス」で売りシグナル(売買タイミングを判断する指標)
RSI(Relative Strength Index): 一般的に70~80%以上で買われ過ぎ、20~30%以下で売られ過ぎ(買われすぎ、売られ過ぎを確認し、売買タイミングを判断する指標)
日足で確認すると、株価上昇と下落の紆余曲折がありながら、2.8倍株になったことが分かりまして、グラフに記載の赤四角部分と青四角部分、紫四角部分に出来高が高く、大きく株価が上昇したポイントがあることが分かります。
赤四角部分の株価上昇要因
まず、赤四角部分の期間(2021/12/13付近)には、未定としていた22年3月期期末配当予想を1株当たり25円増配の38円(前年同期は13円)にすると発表しています。
さらに業績の動向などを勘案して普通配当を1株当たり23円にする他、22年3月13日に創業70周年の記念配当15円を実施するなど、配当金の増配が好感されて、株価が上昇したと考えられます。
青四角部分の株価上昇要因
次に、青四角部分の期間(2022/5/16付近)には、2022年3月期連結決算を発表しています。
売上高・純利益の部分で説明しましたように、最高純益を達成しており、普通配当を1株当たり40円とすることを発表しており、これらの好調な決算が好調で配当金増配に好感を持たれ、株価が上昇したと考えられます。
紫四角部分の株価上昇要因
最後に、紫四角部分の期間(2022/8/18付近)には、2023年3月期第1四半期(22年4月-6月)連結決算を発表しています。
売上高が前年同期比13.0%増の49.74億円、四半期純利益が同535.9%増の3.17億円となり、第2四半期累計業績予想について、第1四半期の好調な業績推移を受け、上方修正を発表しており、これらの好調な決算が好感され、今後の期待が織り込まれ、株価が上昇したと考えられます。
上記のような要因によって、投資家の好感を買い、上昇トレンドに乗って、2020年10月付近に900円だった株価が、2022年8月には、約2,500円まで株価が上昇したと考えられます。
まとめ
この記事では、高千穂交易(2676)の株価上昇要因について、解説しました。
今回の高千穂交易の主な株価上昇要因としては、以下のような要因がありました。
- 過去最高益達成
- 業績予想の上方修正
- 配当金の増配
過去最高益達成など、業績の良さから配当金を増配するなど、高千穂交易は投資家への還元を考えている会社と考えられます。
投資家視点としては、業績が好調な時に、株主に還元をしてくれる企業ということであれば、安定的なインカムゲインを得ることができますので、やはり株主への還元を考えている会社は株価上昇しやすいのではないかと考えられます。
今後、そのような観点でも、分析(安定的な配当金増配する各企業の株価推移など)を行い、裏付けデータを取っていければと思います。
長々と記載させて頂きましたが、お読み頂きまして、ありがとうございました。今回お読み頂いて、お読み頂いた方の気づきがあれば、幸いです。
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