この記事では、レンタルDVDや中古ゲーム販売を展開しているゲオホールディングス(2681)の2022年の間に株価上昇した要因(原因、理由)について、分析した情報を解説していきます。
ゲオホールディングスの企業概要
まずは、ゲオホールディングスの概要を確認していきたいと思います。
出典:2023年2集 会社四季報
ゲオホールディングスは、皆さんも一度はご利用をしたことがあるのではないかと思いますが、レンタルDVD/CD事業を展開している事業です。
レンタルDVD/CDといえば、最近、動画配信のサブスクリプションサービス(Netfrix, Amazon primeなど)の影響で需要が減りつつある事業のイメージです。
ゲオホールディングスもいよいよ倒産や閉業なんてことになるのでは・・・と思いきや、ゲオホールディングスのレンタル事業での売上は、2023年時点で、たった1割に過ぎないようです。
レンタル事業以外にどんな事業をしているのかというと、概要にも記載した通り、リユース事業を展開しており、リユースで有名な2nd STREETは、GEOグループの店舗でして、この2nd STREETの国内店舗数は、2023年3月期 第3四半期末時点で787店舗と、GEOの店舗数1,098店舗に迫る勢いで店舗数を拡大しているようです。
2nd STREETは米国、マレーシア、台湾にも店舗を出店しているようで、リユース事業は、SDGsの観点でも好印象に感じますし、今後も売上が増えていくのではないかと考えられます。
それでは、ゲオホールディングスの2022年に上昇した株価チャートを見ていきます。
株価チャート
※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:12ヶ月移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線
こちらの月足の株価チャートで示した、赤四角で囲んだ部分が今回分析を行う株価上昇部分となります。
株価上昇に転じる前の2022年1月(2022-Mar-31)付近の株価の底が、約1,100円となっています。
その後、2,200円付近まで上昇しているので、株価の底1,100円でゲオホールディングスの株式を購入できれば、2200円/1100円=200%(2倍株)となり、ゲオホールディングスの株式を購入したお金が約2倍に化けていたことになります。
100万円分購入していたら、200万円に変化ということですね。
それでは、気になる2倍株に変化した要因を分析していきます。
上昇要因の分析
財務面での分析
まずは、各企業のIRページにて、開示されている決算や有価証券報告書に記載の財務状況から、株価上昇の要因を分析していきます。
ちなみに、ゲオホールディングスの決算や有価証券報告書が開示されているIRサイトのURLは、こちらです。ご興味ある方は、ぜひご確認頂ければと思います。
財務面で確認する項目は、以下に示す通りで、投資の神様と言われるウォーレン・バフェットの指標(出典:バフェットの財務諸表を読む力)をお借りして、財務面の状況を確認していきたいと思います。
財務面の確認項目
- 売上高(営業収益)
- 純利益
- 流動比率(=流動資産/流動負債)
- 現金
- ROE(株主資本利益率=純利益/純利益)
- EPS(1株当たり利益=純利益/発行済み株式総数)
- キャッシュフロー・マトリックス
売上高・純利益
売上高と純利益は以下グラフのようになります。
株価上昇があった期間が、2022年となりますが、その前年2021年の純利益は、2020年から大幅減益の損失となっています。
決算短信によると、大幅減益の理由としては、コロナウイルスの影響で消費者の外出自粛が続くなかで、新品ゲーム関連商品の販売が堅調に推移し、売上高は増加したものの、売上総利益率の低下と出店費用等販管費の増加及び減損損失を計上したことが影響のようです。
減損損失は、企業が保有する固定資産の収益性が低下して、投資回収可能額が帳簿上の価格を下回った際に、その下落分を損失として、計上するもので、DVD等映像レンタル商材が第1四半期は外出自粛の巣ごもり需要が発生したものの、通期ではレンタル売上減少比率が前年度より悪化したようで、レンタル商材の固定資産の減損損失が影響したのではないかと考えられます。
一方、2022年には、純利益の大幅な上昇が見られます。
決算短信によると、2022年の純利益上昇の要因としては、外出自粛の影響を強く受けていた、2nd STREETのリユース衣料品の売上回復やリユースラグジュアリー商材の海外市場の盛況で高級時計等の海外卸売りが好調に推移したようです。
また、巣ごもり需要で新品ゲーム機本体の需給バランスの不均衡が改善方向に進み、リユースゲーム機本体の買取状況も徐々に好転したことなども影響しているようで、これらの要因によって、2022年の純利益は、2021年の損失から大幅増益の黒字になったようです。
これらのような決算の数値が株主に好感を持たれ、株価上昇に繋がっていたのではないかと考えられます。
その他財務状況
株価上昇の分析でも使いますが、主に投資対象としての適正を見る側面として、流動比率、現金、ROE(株主資本利益率)、EPS(1株当たり利益)、キャッシュフロー・マトリックスの数値を見ていきます。
ウォーレン・バフェット指標:過去5年以上0.5%以上か?
ウォーレン・バフェット指標:現金の推移は安定しているか、右肩上がりか?
ウォーレン・バフェット指標:株主資本利益率(ROE)は安定的に高い数値か?
ウォーレン・バフェット指標:1株当たり利益(EPS)が安定的に高くなっているか?
ウォーレン・バフェット指標:キャッシュフロー・マトリックスが安定期もしくは投資期か?(下図参照)
これらの指標を確認すると、やはり赤字を計上した、2021年の純損失によって、ROEやEPSの悪化がありますし、キャッシュフロー・マトリックスで破綻期に入っている年があり、意外にも黒字計上の2022年で、2022年の棚卸資産が前年2021年の△3,986百万円から△8,990百万円に悪化しています。
棚卸資産は、商品などの在庫のことを言うので、おそらくリユース事業などで、販売より買取が多くなり、マイナス幅が大きくなったと思われます。
確かに販売が少なく、買取ばかりが多くなると、買い取った物の資産で、貸借対照表上の資産は、変わらないですが、現金や現金同等物は減っていっているので、黒字倒産というリスクは少なからずありますね・・・。
投資家として、このようなリスクを回避するために、キャッシュフローを確認する重要性が分かりますね。
次に、日足でのチャートと各種テクニカル指標を確認し、もう少し詳細な株価上昇要因を見ていきます。
日足チャートとテクニカル指標での分析
日足チャートとボリンジャーバンド、MACD、RSIなどのテクニカル指標を追加したグラフがこちらです。
※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:25日移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線
<テクニカル指標説明>
ボリンジャーバンド: 一般的に、上線にローソク足が近づけば売り、下線にローソク足が近づけば買い(価格の大半が上線と下線の帯(バンド)の中に収まるという統計学を応用した指標で、様々な活用法がある)
MACD(Moving Average Convergence Divergence): ヒストグラムが「マイナス→0→プラス」で買いシグナル、「プラス→0→マイナス」で売りシグナル(売買タイミングを判断する指標)
RSI(Relative Strength Index): 一般的に70~80%以上で買われ過ぎ、20~30%以下で売られ過ぎ(買われすぎ、売られ過ぎを確認し、売買タイミングを判断する指標)
日足で確認すると、株価上昇と下落の紆余曲折がありながら、2倍株になったことが分かりまして、グラフに記載の赤四角部分と青四角部分に株価が上昇したポイントがあることが分かります。
赤四角部分の株価上昇要因
まず、赤四角部分の期間(2022/8/12付近)には、2023年3月期の第1四半期の決算報告がありました。
リユース衣料の好調が続き、営業利益が前年同期比3.5倍の約40億円になり、通期営業利益予想に対する進捗率が第1四半期で58%と高進捗率になったことを好感され、株価が上昇したと考えられます。
青四角部分の株価上昇要因
次に、青四角部分の期間(2022/12/26付近)には、特に決算報告などはなかったようですが、IRの開示情報で2nd STREETの米国店舗数が20店舗を達成したと開示がありました。
また、岩井コスモ証券が目標株価の引き上げを行なったことが投資家の好感を買い、株価が上昇したと思われます。
上記のような要因によって、投資家の好感を買い、各ポイントで上昇トレンドに乗って、2022年1月付近に1,100円だった株価が、2022年12月には、2,200円まで株価が上昇したと考えられます。
まとめ
この記事では、ゲオホールディングス(2681)の株価上昇要因について、解説しました。
今回のゲオホールディングスの主な株価上昇要因としては、以下のような要因がありました。
- 営業利益の大幅増益(通期予想の高進捗率)
- 出店店舗数の増加
- 証券会社の目標株価引き上げ
営業利益の大幅増益によって、通期予想の高進捗率達成などから証券会社の目標株価引き上げが起こり、今後の成長期待から、株が買われ、株価が上昇したと考えられます。
また、出店店舗数の増加等、街中を観察していると、分かるような変化からも株価が上昇することが分かりました。
よく株式投資の記事や書籍で見ますが、街中を歩きながらアンテナを張って、街中を観察して、自分が感じた変化を大事にすることは、やはり大事なのかもしれないですね。
街中の変化は、企業が開示するより早く起きていると思われますし、街中にも株価上昇のヒントはいっぱい転がっているのかもしれないですね。
長々と記載させて頂きましたが、お読み頂きまして、ありがとうございました。今回お読み頂いて、お読み頂いた方の気づきがあれば、幸いです。
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