この記事では、『日本国債の金利変動に対する銀行株の株価への影響』の解説や『過去の金利と銀行株の株価の推移』を分析していきたいと思います。
結論を先に申し上げておきますと、金利と銀行株の株価は過去のチャートにおいて、相関があり、今後の金利動向を把握せずに、銀行株を購入すると損をする可能性が高くなりますので、原理原則を抑えておきましょう。
日本国債の金利とは?
まずは、日本国債の金利について説明していきたいと思います。
国債とは、国の発行する債権(投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券)を言い、簡単に言うと、国が投資家からお金を借りたという借用書のようなものです。
国債は、日本だけでなく、ほとんどの国が発行しており、日本が発行する国債のことを日本国債と言い、アメリカが発行した国債であれば、米国債と言います。
次に、国債の金利についてですが、上述しましたように国債は国の借金なので、借金をした場合、借りた分のお金+αの利息(利子)をつけて返済する必要があり、金利は借金の金額に対してどれくらいの割合で利息が発生するのかを表したものになります。
金利の計算と日本国債の種類
これまで、日本国債の金利について、説明しましたが、日本国債の金利の計算や日本国債の種類についても少しお話ししておきます。
令和5年8月15日に発行された変動10年第160回債を100万円分購入した場合、初めに受け取れる利息は、以下のように1,400円(日本の場合、半年に1回利払い)となります。
※財務省 受取利子シミュレーションより
このシミュレーションで、変動10年という言葉がありましたが、これは、個人向け国債の「個人向け利付国庫債権(変動・10年)」という商品のことで、それ以外にも以下のような商品があります。
※財務省HPより
シミュレーションで出てきた変動10年は、変動金利を採用しており、基準金利に0.66を掛けた金利が適用されて、計算が行われます。(シミュレーションの適用金利0.28%は基準金利0.43%✖︎0.66された数値)
日本国債金利と銀行株価の関係
ここから、本題の日本国債の金利と銀行株価の関係について、解説していきたいと思います。
日本国債金利と銀行株のチャート比較
冒頭にも述べましたように、過去のチャートにおいて、日本国債金利と銀行株の株価は相関あります。
それを示したのが以下の4つのチャートとなり、順番は、日本10年国債利回り(≒日本国債金利)→三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)株価→三井住友フィナンシャルグループ(8316)株価→みずほフィナンシャルグループ(8411)株価となります。
■日本10年国債利回り(≒日本国債金利)
■三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)株価
■三井住友フィナンシャルグループ(8316)株価
■みずほフィナンシャルグループ(8411)株価
これらのチャートを見ると、以下のようなことが分かると思います。
・メガバンク3社の長期的な株価の値動きは類似となっている
・日本国債金利上昇と銀行株価上昇のタイミングが同じであることが多い
(例:2005年の銀行株大幅上昇、2013年と2015年の金利上昇スパイク)
・2021年当たりから日本国債金利上昇が見られ、銀行株価の上昇が見られる
完全に同期しているわけではありませんが、日本国債金利と銀行株の株価に少しは相関があるということがチャートから見てとれたと思います。
では、なぜ日本国債金利と銀行株の株価に相関があるかを解説していきたいと思います。
日本国債金利と銀行株価の相関理由
まず初めに、銀行の業務の一つである融資について説明していきたいと思います。
銀行の融資について
銀行は、お金を借りたい企業や人にお金を貸し、一般的に借りたお金に利息をつけて、返済してもらう融資によって、利益(稼ぎ)を得ています。
この借りたお金に対して、どれぐらいの割合で利息が発生するか、つまり金利(銀行の場合、貸出金利とも言います)によって、銀行の稼ぎが変わってくることが分かります。
例えば、1億円を貸し出した時に、貸出金利が1%と5%の場合で利息を計算してみます。
貸出金利1%時:1億 ✖︎ 1% = 100万円の儲け
貸出金利5%時:1億 ✖︎ 5% = 500万円の儲け
貸出金利5%時の儲け ー 貸出金利1%時の儲け = 400万円
この計算のように、貸出金利が1%と5%の時では、400万円の儲け(利益)の差が出ることが分かります。
したがって、銀行の業績が上がるには、貸出金利が重要になるということです。
銀行の貸出金利について
それでは、次に銀行の貸出金利がどのように決まっていくかを説明していきたいと思います。
貸出金利には、大きく分けると短期金利(1年未満の金融資産の金利)と長期金利(1年以上の金融資産の金利)があります。
この短期金利は、日本銀行(日本の中央銀行)が定期的に実施している金融政策決定会合で決められる政策金利に影響を受け、長期金利は為替や景気、物価など様々な要因に影響を受けますが10年国債利回りが指標となり、決められると言われています。
それぞれ短期金利と長期金利がどのように決まっていくかについて、説明していきたいと思います。
短期金利の決まり方
まず、短期金利についてです。
短期金利の代表的な指標に政策金利があり、政策金利によって、短期金利が決まると言われています。
その政策金利とは、景気や物価の安定など金融政策上の目的を達成するために、日本銀行が設定する短期金利のことで、民間銀行(三菱UFJ銀行や三井住友銀行、みずほ銀行など)が日本銀行に預けているお金に対する金利を決めます。
つまり、政策金利とは、民間銀行が日本銀行に預けているお金に対して、どれぐらいの割合で利息が発生するかを表したものになります。
この政策金利の短期金利への影響としては、以下のような内容となります。
■政策金利上昇時
政策金利上昇→日本銀行に預けるお金が増える→お金の流通量が減る→お金を借りたい人に対してお金を貸す銀行が減る(需要に対して供給が不足)→短期金利上昇
→民間銀行は日銀からの金利があるので、短期金利を政策金利より低くしてまでお金を貸さない(お金を借りたい人>お金を貸したい人)
■政策金利低下時
・政策金利低下→日本銀行に預けるお金が減る→お金の流通量が増える→お金を借りたい人に対してお金の供給が過剰になる(需要に対して供給が過剰)→短期金利低下
→民間銀行は日銀にお金を預けていても儲けが少ないので、短期金利を低くしてもお金を貸す(お金を借りたい人<お金を貸したい人)
上述の関係より、政策金利が上昇することで、短期金利が上昇し、民間銀行の融資による儲け(利益)を多く確保できるようになり、民間銀行の業績が伸びることが期待できます。
つまり、政策金利上昇 ≒ 短期金利上昇 ≒ 民間銀行の業績up = 民間銀行の株価上昇が成り立つことになります。
長期金利の決まり方
次に、長期金利についてです。
先ほど説明しましたように、長期金利の代表的な指標として、10年国債利回りがあり、この10年国債利回りを基に長期金利が決まるとされています。
10年国債利回りは、為替や景気、物価にも影響を受けますし、短期金利による影響も受け、短期金利を政策金利で操作し、それが長期金利にも波及するとされています。
この長期金利は、一般的に住宅ローンや自動車ローンなどの金利に適用されるため、10年国債利回り上昇 ≒ 長期金利上昇 ≒ 民間銀行の業績up ≒ 民間銀行の株価上昇が成り立つことになります。
まとめ
これまで説明してきましたように、10年国債利回りや政策金利などが銀行の業績や株価に大きく関わってきており、10年国債利回りと銀行の株価が似たようなチャート形状を示した理由が、その関わりの深さからきていると考えられます。
また、10年国債利回りや政策金利は、その時々の経済状況に応じて、変化していき、経済状況を把握することで、将来どのような動きになるかおおよそ予測することができると考えられます。(インフレなので金利上昇、デフレなので金利低下など)
よって、その時々の経済状況から、今後の金融政策を予想し、銀行の株価がどうなるかを予想することで、大きな利益を獲得することができると思いますので、ぜひ今後の経済状況などから、銀行の株の売買タイミングを図って頂ければと思います。
長々と記載させて頂きましたが、お読み頂きまして、ありがとうございました。今回お読み頂いて、お読み頂いた方の気づきがあれば、幸いです。
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