この記事では、100円ショップで有名なセリアの2015年から2018年の間に株価上昇した要因(原因、理由)について、分析した情報を解説していきます。
セリアの企業概要
まずは、セリアの概要を確認していきたいと思います。
出典:2023年2集 会社四季報
セリアは、2023年1月末時点で、直営店1,904店、FC店(フランチャイズ)39店の合計1,943店の店舗を出店しています。よく見かけるとは思っていましたが、おおよそ2,000店も店舗を出店していたことは驚きでした。
セリアは、イタリア語では、「まじめな」という意味を持つようで、あらゆる面で「まじめ」を貫き通すことを企業理念に置いているようです。
また、トップメッセージによると、100円ショップは、「安さ」を売りにしてきた従来スタイルは終わり、新たなステージへ移りつつあると述べておりました。
確かに、日本でもインフレが起こり、あらゆるモノの値上がりが起こっているので、100円という値段にこだわり続け、利益を生み出すことは難しくなりつつあると思われますし、昔のような大量消費の時代は終わり、SDGsに掲げられているように持続可能な社会を築くための価値提供が大事になってくると思われます。
今後、どのようなビジネスモデルに進化させるかに要注目です。
それでは、セリアの2015年から2018年に株価上昇したチャートを見ていきます。
株価チャート
※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:12ヶ月移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線
こちらの月足の株価チャートで示した、赤四角で囲んだ部分が今回分析を行う株価上昇部分となります。
株価上昇に転じる前の2015年の株価の底が、約2,000円となっています。
その後、7,000円付近まで上昇しているので、株価の底2,000円でセリアの株式を購入できれば、7000円/2000円=350%(3.5倍株)となり、セリアの株式を購入したお金が3.5倍に化けていたことになります。
100万円分購入していたら、350万円に変化ということですね。
それでは、気になる3.5倍株に変化した要因を分析していきます。
上昇要因の分析
財務面での分析
まずは、各企業のIRページにて、開示されている決算や有価証券報告書に記載の財務状況から、株価上昇の要因を分析していきます。
ちなみに、セリアの決算や有価証券報告書が開示されているIRサイトのURLは、こちらです。ご興味ある方は、ぜひご確認頂ければと思います。
財務面で確認する項目は、以下に示す通りで、投資の神様と言われるウォーレン・バフェットの指標(出典:バフェットの財務諸表を読む力)をお借りして、財務面の状況を確認していきたいと思います。
財務面の確認項目
- 売上高(営業収益)
- 純利益
- 流動比率(=流動資産/流動負債)
- 現金
- ROE(株主資本利益率=純利益/純利益)
- EPS(1株当たり利益=純利益/発行済み株式総数)
- キャッシュフロー・マトリックス
売上高・純利益
売上高と純利益は以下グラフのようになります。
株価上昇があった期間が、2015年から2018年となりまして、その期間の売上高と純利益を見ると、売上高、純利益ともに、右肩上がりの増加傾向が確認できます。
売上高及び純利益の右肩上がりの要因としては、以下の店舗数のグラフが示すように、店舗数の上昇が要因と考えられ、店舗数も売上高に比例するように、右肩上がりになっていることが分かります。
2015年から2020年の決算短信における、店舗数に対するコメントとしては、文言をそのままコピーしたのかな、と疑いを持つぐらい、店舗の出退店がほぼ計画どおりに進捗したようです。
これらの右肩上がりの売上高、純利益、計画通りの店舗数出退店などが、株価上昇に繋がっていたのではないかと考えられます。
その他財務状況
株価上昇の分析でも使いますが、主に投資対象としての適正を見る側面として、流動比率、現金、ROE(株主資本利益率)、EPS(1株当たり利益)、キャッシュフロー・マトリックスの数値を見ていきます。
ウォーレン・バフェット指標:過去5年以上0.5%以上か?
ウォーレン・バフェット指標:現金の推移は安定しているか、右肩上がりか?
ウォーレン・バフェット指標:株主資本利益率(ROE)は安定的に高い数値か?
ウォーレン・バフェット指標:1株当たり利益(EPS)が安定的に高くなっているか?
ウォーレン・バフェット指標:キャッシュフロー・マトリックスが安定期もしくは投資期か?(下図参照)
これらの指標を確認すると、すべての指標において、優秀な数値となっており、キャッシュフローマトリックスも、iPhoneで有名なAppleと同じような形のキャッシュフローマトリックスになっており、投資対象としては、良い銘柄のように思えます。
次に、日足でのチャートと各種テクニカル指標を確認し、もう少し詳細な株価上昇要因を見ていきます。
日足チャートとテクニカル指標での分析
日足チャートに、ボリンジャーバンド、MACD、RSIなどのテクニカル指標を追加したグラフがこちらです。(日足チャートのみと日足チャートにテクニカル指標追加したグラフを分けています)
■日足チャート
■日足チャート+MACD+RSI+出来高
※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:25日移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線
<テクニカル指標説明>
ボリンジャーバンド: 一般的に、上線にローソク足が近づけば売り、下線にローソク足が近づけば買い(価格の大半が上線と下線の帯(バンド)の中に収まるという統計学を応用した指標で、様々な活用法がある)
MACD(Moving Average Convergence Divergence): ヒストグラムが「マイナス→0→プラス」で買いシグナル、「プラス→0→マイナス」で売りシグナル(売買タイミングを判断する指標)
RSI(Relative Strength Index): 一般的に70~80%以上で買われ過ぎ、20~30%以下で売られ過ぎ(買われすぎ、売られ過ぎを確認し、売買タイミングを判断する指標)
日足で確認すると、何度も利益確定売りによる、株価上昇後の下落が見られますが、その利益確定売りにも負けず、株価上昇の材料を発表し続けて、3.5倍株になったと考えられます。
株価上昇ポイントが、複数あるのですが、とりわけ大きく株価上昇している、グラフに記載の赤四角部分と青四角部分、紫四角部分、緑四角部分の株価上昇分析をしたいと思います。
赤四角部分の株価上昇要因
まず、赤四角部分の期間(2015年5月付近)には、2015年3月期の通期決算の報告をしております。
この決算では、経常利益を前期比1%増の107億円となり、7期連続最高益を達成したことを報告しています。また、配当金も5円の増配を報告しています。
これらの材料が投資家の好感を買い、株価が上昇したと考えられます。
青四角部分の株価上昇要因
次に、青四角部分の期間(2016年2月付近)には、2016年3月期の第3四半期決算の報告をしております。
この決算では、直営既存店の売上が順調に推移し、また売上原価率が想定を下回ったことなどから、通期業績予想の上方修正を発表しています。
上方修正の内容としては、経常利益が、修正前2.8%増の110億円、純利益が、修正前2.9%増の72億円と、あまり大きな上方修正率ではありませんが、株価が少し下がり気味(成長鈍化を想定?)の中、さらなる成長期待から、株価が上昇したのではないかと考えられます。
紫四角部分の株価上昇要因
次に、紫四角部分の期間(2017年1月付近)には、2017年3月期の第3四半期決算の報告をしています。
この決算では、上記の2016年3月期第3四半期決算と同じく、直営既存店の売上が計画を上回る水準で推移し、また想定上の円高によって、仕入価格が抑制できたことで、売上原価率が想定を下回ったことなどから、通期業績予想の上方修正を発表しています。
上方修正の内容としては、売上高が、修正前0.6%増の1,443億円、経常利益が、修正前3.5%増の145億円、純利益が、修正前3.1%増の100億円と、こちらもあまり大きな上方修正率ではありませんが、9期連続の最高益達成プラスアルファ、最高益の上乗せによる、成長の期待から株価が上昇したのではないかと考えられます。
さらに、2017年2月に配当予想の修正と株式分割の発表をしています。
配当予想の修正については、修正前5円増配の40円としており、株式分割については、普通株式1株につき2株の割合をもって、分割することを発表しています。
これらの、材料が投資家の好感を買い、株価が2,000円近く上昇したと考えられます。
緑四角部分の株価上昇要因
最後に、緑四角部分の期間(2017年10月付近)には、2018年3月期の第2四半期決算の報告をしています。
この決算では、上記2016年、2017年決算と同じく、直営既存店売上高が103.3%と順調に推移したこと及び、売上原価率はほぼ想定通りに推移したことから、売上高が、修正前0.6%増の1,590億円、経常利益が、修正前2.4%増の170億円、純利益が、修正前1.7%増の117億円の上昇修正を発表しています。
10期連続の過去最高益達成かつ、最高益の上乗せによる、投資家の期待感から、株価が上昇したと考えられます。
上記のような要因によって、利益確定売りによる株価下落を乗り越えながら、各ポイントで上昇トレンドに乗って、2015年付近に1,000円だった株価が、2018年付近には、7,000円まで株価が上昇したと考えられます。
まとめ
この記事では、セリア(2782)の株価上昇要因について、解説しました。
今回のセリアの主な株価上昇要因として、以下のような要因がありました。
- 過去最高益の10期連続達成
- 業績の上方修正
- 配当金の増配
- 株式分割
セリアの株価上昇要因の理由としては、過去最高益の連続達成や業績の上昇修正による、成長の持続性による要因が大きかったのではないかと思われます。
とりわけ、業績の上方修正をよく発表しており、大きな株価上昇があった、2015年から2018年の期間で、3回もの上方修正を行なっています。
つまりは、セリアの商品にたくさんの人々が価値や魅力を感じて、企業の想定以上に商品を購入されたということの裏返しになると思います。冒頭にも紹介させていただいた通り、セリアの文字の意味「まじめ」を貫き通す企業理念から、セリアは商品づくりに「まじめ」に向き合い、消費者の方々に少しずつ信頼されていったことが大きかったのではないかと感じました。
自分も一会社員として、思いますが、企業理念や経営の一貫性というものは、製品やサービスへ大きな影響を与えるものだと感じますので、長期投資する際は、その企業の理念や経営の一貫性を見抜く力も必要なのではないかと感じました。
長々と記載させて頂きましたが、お読み頂きまして、ありがとうございました。今回お読み頂いて、お読み頂いた方の気づきがあれば、幸いです。
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