この記事では、企業名の通り、ソースで有名なブルドッグソースの2020年から2021年の間に株価上昇した要因(原因、理由)について、分析した情報を解説していきます。
ブルドッグソースの企業概要
まずは、ブルドッグソースの概要を確認していきたいと思います。
出典:2023年2集 会社四季報
ブルドッグソースは、その企業名の通り、ソースを製造販売している会社で、ウスターソースや中濃ソース、とんかつソースだけでなく、お好みソースや焼きそばソースなども製造しているようです。
また、ソース以外にも、ドレッシングやパスタ用粉末ソース、お好み焼きやもんじゃ焼くの材料セットなども製造販売しているようです。
そのブルドックグループの長期ビジョンやブルドックソースの想いに、「ソースのしあわせを、もっともっとカラフルに」という言葉を使っています。
この言葉には、新しい素材や個性との出会いという、いろんな色が混じり合って、ブルドックソースの茶色ができていることから、つぎの一歩、つぎの一手という、別の色が加わって、もっともっとカラフルなしあわせをブルドックソースを通じて、届けたいという、想いからきているようです。
つまり、今のソースをもっとより良くして、ソース「Sauce」を極める世界ブランドに成長することが、ブルドックソースの長期的な戦略の方向性のようです。
それでは、ブルドックソースの2020年から2021年に株価上昇したチャートを見ていきます。
株価チャート
※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:12ヶ月移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線
こちらの月足の株価チャートで示した、赤四角で囲んだ部分が今回分析を行う株価上昇部分となります。
株価上昇に転じる前の株価の底が、約1,200円となっています。
その後、約3,000円付近まで上昇しているので、株価の底1,200円でブルドッグソースの株式を購入できれば、3000円/1200円=250%(2.5倍株)となり、ブルドックソースの株式を購入したお金が2.5倍に化けていたことになります。
100万円分購入していたら、250万円に変化ということですね。
それでは、気になる2.5倍株に変化した要因を分析していきます。
上昇要因の分析
財務面での分析
まずは、各企業のIRページにて、開示されている決算や有価証券報告書に記載の財務状況から、株価上昇の要因を分析していきます。
ちなみに、ブルドックソースの決算や有価証券報告書が開示されているIRサイトのURLは、こちらです。ご興味ある方は、ぜひご確認頂ければと思います。
財務面で確認する項目は、以下に示す通りで、投資の神様と言われるウォーレン・バフェットの指標(出典:バフェットの財務諸表を読む力)をお借りして、財務面の状況を確認していきたいと思います。
財務面の確認項目
- 売上高(営業収益)
- 純利益
- 流動比率(=流動資産/流動負債)
- 現金
- ROE(株主資本利益率=純利益/純利益)
- EPS(1株当たり利益=純利益/発行済み株式総数)
- キャッシュフロー・マトリックス
売上高・純利益
売上高と純利益は以下グラフのようになります。
株価上昇があった期間が、2020年から2021年となりまして、その期間の売上高と純利益を見ると、売上高が少し増加しておりますが、純利益はほぼ横ばいになっています。
2021年の純利益に関しては、まず、営業利益は、新型コロナウイルス感染防止対策費用の増加や、新商品発表会などのマーケティング費用増加があったものの、業務の生産性向上による経費削減等により、前期比12.7%増になっているものの、生産体制再構築に係る資金調達費用(シンジケートローンに係る費用)が掛かったようで、前期比0.2%増で留まったようです。
売上高と純利益の状況からは、株価がなぜ上昇したかは、読み取れないのではないかと考えられます。
その他財務状況
株価上昇の分析でも使いますが、主に投資対象としての適正を見る側面として、流動比率、現金、ROE(株主資本利益率)、EPS(1株当たり利益)、キャッシュフロー・マトリックスの数値を見ていきます。
ウォーレン・バフェット指標:過去5年以上0.5%以上か?
ウォーレン・バフェット指標:現金の推移は安定しているか、右肩上がりか?
ウォーレン・バフェット指標:株主資本利益率(ROE)は安定的に高い数値か?
参考:2018年 日本の上場企業ROE平均値9.4%(出典:経済産業省)
ウォーレン・バフェット指標:1株当たり利益(EPS)が安定的に高くなっているか?
ウォーレン・バフェット指標:キャッシュフロー・マトリックスが安定期もしくは投資期か?(下図参照)
これらの指標を確認すると、流動比率の2022年での悪化、ROEやEPSが2018年から減少していることがあり、数値的には、投資対象として、そこまで良い印象ではないように思えます。
次に、日足でのチャートと各種テクニカル指標を確認し、もう少し詳細な株価上昇要因を見ていきます。
日足チャートとテクニカル指標での分析
日足チャートに、ボリンジャーバンド、MACD、RSIなどのテクニカル指標を追加したグラフがこちらです。(日足チャートのみと日足チャートにテクニカル指標追加したグラフを分けています)
■日足チャート
■日足チャート+MACD+RSI+出来高
※緑線:ボリンジャーバンド上線、青線:25日移動平均線、赤線:ボリンジャーバンド下線
<テクニカル指標説明>
ボリンジャーバンド: 一般的に、上線にローソク足が近づけば売り、下線にローソク足が近づけば買い(価格の大半が上線と下線の帯(バンド)の中に収まるという統計学を応用した指標で、様々な活用法がある)
MACD(Moving Average Convergence Divergence): ヒストグラムが「マイナス→0→プラス」で買いシグナル、「プラス→0→マイナス」で売りシグナル(売買タイミングを判断する指標)
RSI(Relative Strength Index): 一般的に70~80%以上で買われ過ぎ、20~30%以下で売られ過ぎ(買われすぎ、売られ過ぎを確認し、売買タイミングを判断する指標)
日足で確認すると、わずか3ヶ月という短期間に、一気に株価が上昇し、最終的に株価が3,000円まで上昇したことが分かります。
それでは、大きく株価上昇している、グラフに記載の赤四角部分の株価上昇分析をしたいと思います。
赤四角部分の株価上昇要因
東京証券取引所市場第一部指定承認に関するお知らせ
まず、株価が急上昇した赤四角部分の期間(2021年1月付近)には、東京証券取引所市場第一部指定承認に関するお知らせをしています。
現在は、東京証券市場がプライム市場、スタンダード市場、グロース市場に再編されましたので、第一部指定という言葉は使用されなくなりましたが、過去、東京証券市場は東証一部、二部、マザーズ及びJASDAQで構成されており、東証一部以外の市場に属する企業が東証一部に上場する際に、第一部指定という言葉が使われていました。
つまり、当時、東証二部に属していたブルドッグソースが、以下のような東証一部上場の主な条件を達成し、東証一部に上場したということです。
■東証一部上場の主な条件
・株主数:2,200人以上
・流通株式数:20,000単位以上
・時価総額:250億円以上
・利益:過去2年間の利益の額の総額が5億円以上、または時価総額が500億円以上
・純資産:10億円以上
この東証一部上場が株価上昇をもたらす効果としては、企業のグレードが上がることもあるが、それより、東証一部上場した銘柄が自動的にTOPIX(東証株価指数;東証一部上場の全株式の動きを示す指数)に連動した投資信託の購入対象銘柄となり、TOPIXに連動した投資信託が東証一部に上場した銘柄を自動購入するので、株価が上昇する可能性が高く、買い(需要)が多くなり、株価が上昇するという効果があります。
業績予想の修正に関するお知らせ
また、上記の東証一部指定承認に関するお知らせから、15日後に業績予想の修正に関するお知らせをしています。
このお知らせでは、経常利益を修正前3.1%増の1,010百万円、純利益を修正前7.5%増の720百万円に上昇修正することを報告しています。
これらの上方修正の要因としては、業務の生産性向上による経費削減の効果であると報告しています。
東証一部指定記念株主優待の実施に関するお知らせ
さらに、業績予想の修正に関するお知らせから、28日後に東証一部指定記念株主優待の実施に関するお知らせをしています。
このお知らせでは、東証一部指定を記念して、100株以上株を保有している株主に、2,500円相当のブルドッグソース製品詰め合わせを配布する株主優待を行うことを報告しています。
上記のような、立て続けの好材料報告で、2020年12月付近に1,200円だった株価が、2021年2月付近には、3,000円まで株価が上昇したと考えられます。
まとめ
この記事では、ブルドックソース(2804)の株価上昇要因について、解説しました。
今回のブルドッグソースの主な株価上昇要因として、以下のような要因がありました。
- 東証一部指定
- 業績の上昇修正
- 記念株主優待
ブルドッグソース株価上昇要因の理由としては、上記のような要因がありましたが、東証一部指定が一番大きな株価上昇の要因だったと思われます。
この東証一部指定については、東証一部への上場基準が決められているので、東証一部への上場基準に近づいている東証一部以外の市場に属する企業を予め調査しておくことで、東証一部指定による株価上昇の恩恵を受けることができると言えます。
今の東証市場の場合ですと、東証一部が東証プライム市場にあたり、東証プライム市場の場合、東証一部より、上場条件の水準が少し高くなった部分が多い、以下のような条件となっています。
■東証プライム市場の上場基準(東京証券取引所公式HPより)
・株主数:800人以上
・流通株式数:20,000単位以上
・流通株式時価総額:100億円以上
・売買代金:時価総額250億円以上
・流通株式比率:35%以上
・利益:最近2年間の利益合計が25億円以上
・売上高:100億円以上かつ時価総額1,000億円以上
・純資産:50億円以上
なかなかすぐに達成できそうな数値ではありませんが、企業側としても、東証プライム市場に上場することで国内外の幅広い投資家から資金調達することができ、さらなる事業の成長を狙えることから、東証プライム上場を目標に成長していく企業も多いのではないかと思われます。
そのような企業を狙って、投資するのも一つの投資手法なのではないかと思いました。
今後、東証プライム市場や過去に東証一部指定された銘柄の株価上昇率などの分析もできればと思います。
長々と記載させて頂きましたが、お読み頂きまして、ありがとうございました。今回お読み頂いて、お読み頂いた方の気づきがあれば、幸いです。
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